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 今日 IPMU(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙機構)のフェイスブックを覗いたら、「銀河団の内部構造と周辺のダークマター分布の間に関係性があることを世界で初めて発見しました」との記事。以前観たテレビ番組で 銀河を取り巻くダークマターの立体地図(*下記の図を参照)が紹介され 銀河とダークマターの関係性が示唆されて(いたように理解して)いましたし、宇宙の大規模構造はダークマターによるものだと 宇宙の講座で聞いたように記憶していましたので、この記事を読んで 今まで見聞きしてきたことは 理論的な推定であって まだ実証されていたわけではなかったことをようやく理解したのでした。


ハッブル宇宙望遠鏡でろくぶんぎ座の一角にある重力レンズ現象を観測。さらに、すばる望遠鏡で同じ領域の奥行きを計測。これら二つの望遠鏡のデータから導き出したダークマターの立体地図。小さく輝いているのは銀河です。

<コズミックフロント☆NEXT「ダークマター 謎の物質の正体は?」より>



 「思いつくこと」と「それを証明すること」には 大きな隔たりがありますが、「証明」においても 「理論的な証明」と「観測における証明」の間に大きな隔たりがあることを、改めて実感しました。
 超弦理論では 時空間は11次元や10次元とされ 私たちが体験している4次元以外の余剰空間はとても小さく折りたたまれているために 見ることができません。しかし、超弦理論だけに基づく“観測可能な予言”をし それが観測できれば、間接的ではあるものの理論の信憑性は高まります。だからこそ、数学を進化させて 観測可能な予言をしたいと、ある研究者の方がおっしゃっていたのですね。



 今回の発見は、私の中では 先日紹介した「量子もつれが時空を形成する仕組みを解明」した研究と ダイレクトな繋がりを感じます。しかし それを「証明」するのは かなり大変なことです。

 「量子ゆらぎ」と「量子もつれ」と「重力」…

 重力は時空によって生まれるのではなく 重力のひとつの現れが時空なのでは…
 重力はゆらぎそのものなのでは…
 いや、ゆらぎの現れが 重力であり 時空であり この宇宙に存在しているもの なのかも…
 重力波が光速なのではなく 光子が重力波の速度に拠っているのでは…
 E=MC2は実は E=質量(≒動かしにくさ:関係性の一つの指標)×「重力波の速度」の二乗なのでは…

 と、素人は 己の「認知バイアス」に従って 勝手に想像を膨らませています。






【余談】

 この宇宙に存在するものが、量子もつれの関係にあるかどうかは まだ不明ですが、決して遮られることのない(ブレーン宇宙論では私たちが認識できない余剰次元や他のブレーン宇宙に伝わるとされる)重力によって関係しあっていることは 確かだと思われます。占星術も ヒト/地球と星々の重力の関係性と捉えることもできますね。
 谷川俊太郎さんは「二十億光年の孤独」の詩の中で「万有引力とは ひき合う孤独の力である」と記していますが、私には「重力とは 孤独を包む真綿の衣[ころも]」に思えます。



【余談その2】

 バックミンスター・フラーのテンセグリティの考え方に拠るなら、この宇宙に存在する(重力以外の?)ものが「圧縮材/圧縮在」で 重力(場?)が「張力材/張力在」ということになるのかな…。







今回も、冒頭の研究の発表記事を ここに保存しておきます。





【資料】

世界初!銀河団の内部構造とダークマターの深い関係が明らかに



2016年1月26日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)



1. 発表者:

Surhud More(スルド・モレ)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 特任助教
高田昌広(たかだ・まさひろ)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 教授


2. 発表のポイント:

●銀河団(注1)の内部構造と周辺のダークマター(注2)分布の間に関係性があることを世界で初めて発見した。
●約138億年の銀河団の形成過程とダークマターの分布に密接な関係があることが示された。
●広天域銀河サーベイの解析には今回の結果を考慮することが必要不可欠であり、ダークエネルギー(注3)、ニュートリノ質量(注4)、インフレーション(注5)など初期宇宙の物理の解明に重要な役割を果たすと期待される。
●成果の重要性が評価され、アメリカ物理学会の発行するフィジカル・レビュー・レター誌(Physical Review Letters)の注目論文(Editors' Suggestion)に選ばれた(2016年1月25日掲載)。

3. 発表概要:

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のSurhud Motr(スルド・モレ)特任助教と高田昌広(たかだ・まさひろ)教授、及びNASAジェット推進研究所/カリフォルニア工科大学の宮武広直(みやたけ・ひろなお)研究員(元Kavli IPMU日本学術振興会特別研究員)らから成る研究グループは、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS:注6)から得られた約9000個の銀河団のサンプルを用いて、重力レンズ効果によるダークマターの分布、銀河団の空間分布の測定結果を組み合わせることで、2桁も異なるスケールである約100万光年スケールの銀河団の内部構造と約1億光年のスケールに及ぶ周辺のダークマターの分布の間に関係性があることを世界で初めて発見しました。これにより、銀河団の質量だけでなく、銀河団の形成史と周辺の大規模な環境が銀河団の特性に影響を与えることを明らかにしました。本研究成果は、ダークマターやダークエネルギーの性質、ニュートリノ質量、さらにインフレーションなどの宇宙初期の物理を調べる際にも今回の結果を考慮すべきことを示しており、その重要性からアメリカ物理学会の発行するフィジカル・レビュー・レター誌(Physical Review Letters)の注目論文としてEditors' Suggestionに選ばれ、2016年1月25日に掲載されました。


4. 発表内容:

宇宙の物質の約80%はダークマターで占められています。我々が住む銀河や宇宙のあらゆる構造は、インフレーション宇宙の量子ゆらぎを起源とする物質分布の非一様性(凹凸)が、ダークマターの重力により成長し、形成してきたと考えられています。そのなかでも、銀河団は、小さな領域に数千もの銀河を含む、宇宙最大の天体です。銀河団の形成にはアークマターや宇宙の膨張史が主要な役割を果たすため、銀河団の特性、例えばその個数密度や空間分布などを詳しく調べることで、ダークマターの性質だけでなく、宇宙膨張を操るダークエネルギーの性質や、ニュートリノの質量(注4を参照)も明らかにすることができると期待されています。ダークマターを仮定した宇宙形成シナリオの理論研究では、銀河団の特性は銀河団の質量によって決定されると考えられていました。

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のSurhud More(スルド・モレ)特任助教と高田昌広(たかだ・まさひろ)教授、及びNASAジェット推進研究所/カリフォルニア工科大学の宮武広直(みやたけ・ひろなお)研究員(元Kavli IPMU日本学術振興会特別研究員)らから成る研究グループは、全天の約4分の1の天域にわたるスローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)の約1000万個もの銀河カタログから得られた約9000個の銀河団を解析することで銀河団の内部構造と周辺のダークマター分布の間に関係があることを世界で初めて明らかにしました。

解析には、光では直接見ることができない銀河団内及び周辺のダークマターの分布を調べるために、重力レンズ効果の測定結果を用いました。約9000個の銀河団について、銀河団内の構造(典型的に約100万光年のスケール)に着目し、その銀河団に属するメンバー銀河が各々の銀河団で中心に集中して分布しているか、あるいは広がって分布しているかという指標に基づき、2つのサンプルに分けました。まず、銀河団の背後の銀河に及ぼす重力レンズ効果の測定から、2つの銀河団が同じ質量を持つことを示しました。一方、銀河団周辺の重力レンズ効果と銀河団の空間分布両方から、その2つのサンプルの周辺の約1億光年のスケールに渡るダークマター分布の総量は、メンバー銀河が中心に集中している銀河団では少なく、広がっている銀河団では多く(図1)、2つのサンプル間で約1.5倍も異なることが分かりました。

この結果はつまり銀河団の質量が同じでも、約100万光年のスケール程度の銀河団の内部構造の特性により約1億光年のスケールに及ぶダークマターの分布に違いが生じていることを示しています。すなわち、銀河団の個数密度や空間分布などの特性が、これまで考えられていた銀河団の質量によってだけでなく、138億年の宇宙の構造進化の歴史における銀河団の形成史と、銀河団周辺のダークマターの分布といった周辺の大規模な環境の影響を受けていることを明らかにしました。

このような、銀河団に属する銀河の分布の特性と宇宙全体のダークマターの分布における深い関係性は、インフレーションが予言する原始ゆらぎの特性が予言する効果であり、今回の観測から数あるインフレーションのモデルを制限することもできると期待されています。さらには、銀河団の観測結果からダークマターやダークエネルギーの性質、ニュートリノの質量、インフレーションの物理、銀河の特性を調べる際に、今回の結果を考慮することが不可欠です。このことから、将来的にはKavli IPMUが進めているすばる望遠鏡のSuMIReプロジェクト(注7)など広天域銀河サーベイから得られる大統計データから宇宙論研究を行うときにも重要となります。

本研究成果について中心となった研究者は以下のように述べています。

高田昌広Kavli IPMU教授
「どんなに遠くにあっても互いに影響を及ぼし合うアインシュタインの重力と、重力でしか見えない冷たいダークマターによって引き起こされる銀河団と宇宙の大規模構造のあいだの関係を発見しました。すばる望遠鏡のSuMIRe(すみれ)計画は、今回の効果をより精密に測定することができます。大変エキサイティングです。」

Surhud More(スルド・モレ)特任助教
「今回、我々が観測したシグナルは単純な理論予測と比較して困惑するほど大きく異なるものです。本研究の最も難しい部分は、シグナルが本物なのかまず我々自身が納得するために膨大な量の解析を行わなければならなかったことでした。」

宮武広直NASAジェット推進研究所/カリフォルニア工科大学研究員(元Kavli IPMU日本学術振興会特別研究員)
「銀河団の内部構造と周辺のダークマター分布の関係性は以前から理論的に指摘されていましたが、今回初めて観測的に発見することができました。インフレーションなどの初期宇宙の物理に迫ることができる可能性があり、これからの研究の広がりにわくわくしています。」


また、WMAP(ダブリュ・マップ)衛星の実験グループを主導するなど世界的な宇宙研究者の一人であるプリンストン大学教授でKavli IPMU主任研究員のDavid Spergel(デイビッド・スパーゲル)氏は本研究成果の意義について

「宇宙論の研究者は長いあいだ単純な理論にとらわれていました。銀河団の特性がその質量だけで決まっているという理論です。今回の結果はこの理論を覆すものです。銀河団の周辺の環境も銀河団の特性の決定に重要な役割を果たしているという結果を得たのです。天文学者はこの複雑な状況の証拠を長年探し続けてきましたが、今回の結果は世界初の決定的な発見になりました。」

と述べています。


5. 発表雑誌:

雑誌名:「Physical Review Letters」116, 041301(2016)
論文タイトル:Evidence of halo assembly bias in massive clusters
著者:Hironao Miyatake(1,2,3)、Surhud More(2)、Masahiro Takeda(2)、David N. Spergel(1,2)、Rachel Mandelbaum(4)、Eli S. Rykoff(5,6)、Eduardo Rozo(7)

著者所属:(略)

論文のアブストラクト(Physical Review Lettersのページ)
Phys. Rev. Lett. 116, 041301 (2016) - Evidence of Halo Assembly Bias in Massive Clusters

プレプリント(arXiv.orgのページ)
[1506.06135] Evidence of Halo Assembly Bias in Massive Clusters


6. 問い合わせ先:(略)


7. 用語解説:

(注1)銀河団

数百から数千個規模の銀河の集団から成る天体。宇宙最大の天体で、1014太陽質量(太陽質量の100兆倍)以上の質量(天の川銀河の1000倍以上)を持つ。空間的な大きさは100万光年程度。質量のほとんどはダークマターで構成される。


(注2)ダークマター

光を出さない、重力のみでしか他の粒子と相互作用しない正体不明の物質。現在の素粒子標準模型では説明できない。宇宙の物質の約80%を占め、初期宇宙で生成された未発見の素粒子が有力候補。


(注3)ダークエネルギー

約70億年前から始まった宇宙の加速膨張を説明するために導入された、宇宙空間を占める正体不明のエネルギー。現宇宙のエネルギー密度の約70%を占める。


(注4)ニュートリノ質量

ニュートリノに質量があることはスーパーカミオカンデなどの素粒子実験によって測定された(本機構の梶田隆章主任研究員が2015年ノーベル物理学賞を受賞)。相互作用が非常に小さいため、宇宙の構造形成ではダークマターのように振る舞う。しかし、ダークマターに比べ、ニュートリノは宇宙空間を高速で飛び回っているため(速度が大きい)、宇宙の構造形成に特徴的な痕跡を残す。例えば、ダークマターのうちニュートリノの質量が占める割合が大きい宇宙では、宇宙構造の形成が妨げられ、銀河団の個数が少ない宇宙になる。


(注5)インフレーション

宇宙の誕生直後に起きた指数関数的な膨張。これにより、宇宙初期の量子揺らぎが宇宙スケールまで引き伸ばされ、現在の宇宙の様々なスケールの構造(銀河・銀河団など)の種となった「ゆらぎ」を生成したと考えられている。


(注6)スローン・デジタル・スカイ・サーベイ (SDSS)

アメリカのアパッチ・ポイント天文台にある2.5メートル望遠鏡を用いた銀河サーベイ。2000年に観測を開始し、現在までに約1万平方度の撮像及び分光観測を行っている。


(注7)すばる望遠鏡 SuMIRe プロジェクト

Kavli IPMU が推進している、すばる望遠鏡広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(HSC)による撮像観測と広視野分光器 Prime Focus Spectrograph(PFS)による分光観測を組み合わせた広天域深宇宙銀河サーベイ。HSC によるサーベイは2014年3月に開始しており、PFS サーベイは2019年に開始予定。


8. 参考画像:
画像は http://web.ipmu.jp/press/20160125-galaxycluster/ からダウンロード可能です。




[図1]天球上における銀河団の分布の地図




メンバー銀河が中心に集中している銀河団の周辺は、ダークマターの分布総量が少なく、銀河団分布密度の凸凹(でこぼこ)も少ない環境である。一方、メンバー銀河が広がって分布している銀河の周辺は、ダークマターの分布総量が多く、銀河団分布密度の凸凹も大きい環境である。(Credit: Sloan Digital Skay Survey, Kavli IPMU)
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